事業環境

消費者金融市場の変化

日本の消費者金融市場は大きく揺れており、市場規模と貸金業者数の両方が減少傾向にあります。

(社)日本クレジット産業協会の『消費者信用統計』によると、日本の消費者ローン市場における消費者金融会社の信用供与残高は、2002年から2005年までの間では10兆円前後で推移していましたが、2006年からは急速に減少に転じ、2008年末の時点ではピーク時に比べ、約3割強減少の6.5兆円となっています。信用供与額を見ても同様の動きを示しており、2001年のピーク時に10.6兆円であったのが、2008年末では45%減少の5.8兆円となっています。

一方、マーケットの参加者数も急激に減少しています。金融庁の統計資料によると、2006年3月末に14,236社あった貸金業登録業者数が減少の一途を辿り、2010年6月末現在では3,313社まで急減しています。利息返還問題や貸金業法改正といった経営環境の悪化を背景に、大手外資系企業の事業売却をはじめ、中堅・中小業者の経営破綻や廃業、鉄道系・自動車系クレジットカード会社のキャッシングビジネスからの撤退などが相次ぎ、この4年間で8割弱の貸金業者がマーケットから姿を消しています。

このように、2006年1月の利息返還請求に関する最高裁判決および同年12月の改正貸金業法の成立を機に、日本の消費者金融マーケットは大きく揺れています。総量規制、上限金利の引き下げといった法改正による市場規模の縮小、利息返還による経営体力の消耗、更には足元の景気低迷、調達環境悪化などの要因により、消費者金融業界はかつて経験したことがないほどの厳しい局面に直面しています。

利息返還請求問題

消費者金融各社にとって、利息返還問題は大きな事業リスクとなっています。

2006年1月の最高裁判決(詳細は「アニュアルレポート2009」を参照)以降「任意ゾーン金利」をめぐる利息返還請求が急増しており、消費者金融業者の経営を大きく圧迫しています。消費者金融大手4社が2006年3月期からの4年間で支払った利息返還金総額は、すでに1.1兆円を超え、利息返還に伴う債権放棄額(消費者金融業者が利息の返還を行う場合は、まず貸付金元本の弁済に充当して当該債権の貸倒処理を行う)を加えると、利息返還関連の損失はおよそ1.9兆円にのぼります。

膨大な利息返還関連損失リスクに対応するため、大手各社は2006年10月の日本公認会計士協会の指針に基づき、利息返還損失関連引当金を一括計上したことから、各社の2007年3月期の最終利益は、株式公開後初の大幅赤字に転落しました。その後も利息返還請求の高止まり状況が続いているため、各社は継続的に引当金の追加繰り入れを行っております。

利息返還関連での損失や引当金の計上によって、消費者金融各社の財務基盤は大きく毀損し、大手4社の自己資本合計額は3年間で約2.3兆円(2006年3月末比71%)の減少となりました。経営体力の消耗という観点から、利息返還問題は消費者金融各社にとって、最大の事業リスクといっても過言ではありません。

このような利息返還リスクが存在するため、銀行などの金融機関は消費者金融各社への融資スタンスを厳しくせざるを得なくなり、財務基盤や資金調達力が比較的弱い中堅・中小業者は破綻・廃業に追い込まれるケースが相次いでいます。これに加え、事業継続している会社も利息返還関連の負担に対して、事業規模の縮小や与信基準の厳格化を行っており、結果として、健全に消費者金融サービスを利用している消費者や、これから利用しようとする消費者の利用機会が損なわれる事態が生じています。

貸金業法の改正および影響

今回の改正でもっとも影響が大きいのは、「上限金利引き下げ」と「総量規制」です。

2006年12月、多重債務者問題の解決を主な目的として、「貸金業の規制等に関する法律の一部を改正する法律」(現貸金業法)が成立し、12月20日に公布されました。今回の法改正は、貸金業の適正化、過剰貸付の抑制、金利体系の適正化に着目したもので、業界自主規制機能の強化をはじめ、指定信用情報機関制度の創設や上限金利の引き下げ、総量規制の導入など、大幅な規制強化となりました。改正の内容が多岐にわたる上、市場へのインパクトが大きいため、準備期間として、4段階に分けて施行されました。詳細は下図(改正貸金業法の主な施行スケジュール)のとおりです。

  

今回の法改正でもっとも影響が大きいのは、4条施行時に導入された、価格規制としての「上限金利引き下げ」および、量的規制としての「総量規制」です。

上限金利の引き下げについては、これまでに行われた数回の法改正により、出資法の上限金利が制定当初の年率109.5%から段階的に引き下げられ、4条施行で、みなし弁済制度が廃止され、上限金利は29.2%から20%まで引き下げられました(利息制限法の上限金利(元本額に応じて20%〜15%)と、出資法の上限金利(20%)の間の金利での貸付は、行政処分の対象となります)。

一方、過剰貸付の抑制策として導入される総量規制は、利用者の借入総額を年収の1/3までに制限する内容となっています。これに関連して、利用者の返済能力調査(50万円超の貸付を行う場合、収入証明の徴収など)の強化や、指定信用情報機関2009年6月の3条施行で整備を利用して、定期的に他社利用額を含めた顧客の残高状況を確認し、与信額をコントロールするといった義務が、消費者金融業者をはじめ、貸金業者に課されました。

法改正によるマーケットへの影響

新規成約率の低下、残高の減少などの影響から、各企業の収益力の低下を招くこととなります。

市場経済の自由競争原理に基づき、消費者金融大手各社は与信ノウハウの蓄積やマーケティング手法の革新などを通じて、常に出資法上限金利の引き下げに先駆け、販売金利を自主的に下げてきました。たとえば、2000年6月の法改正では、上限金利が40.004%から29.2%に引き下げられましたが、すでに当時の大手各社の平均貸付金利は25.5%前後となっていました。

しかしながら、今回の法改正は価格面の規制と同時に前例のない量的規制を行う内容であるため、今後マーケット全体に影響が出てくる可能性もあることから注視してまいります。

消費者金融ビジネスの本質はリスク・プライシングであるため、本来は、顧客のリスクに応じ、信用リスクの高い顧客には高い金利で少額を、信用リスクの低い顧客には低い金利で高額の与信を行うスコアリングシステムにより、適正な与信管理を行うものです。ところが、上限金利の引き下げや総量規制の導入がなされると、貸金業者の信用リスクへの許容度が低下し、こうした仕組みが機能しなくなると、消費者の需要に貸金業者が応えることができず、新規成約率の低下や残高の減少を招きます。実際、すでに消費者金融大手4社は前倒しで利息制限法以下の金利商品を販売していますが、与信基準厳格化の実施によって、新規成約率は2006年3月期の63%から、当期は36%まで著しく低下しています。

また、金利引き下げによる利回りの低下、総量規制による融資残高の減少は、利息収入の減少に直結し、貸金業者の収益力が大幅に低下します。現行の上限金利29.2%でビジネスを展開している中堅・中小業者にとっては、収益モデルがまったく成立しなくなり、マーケットからの退場を余儀なくされています。一方、大手企業に関しても、新たな収益モデルを構築することが急務となり、店舗・人員削減などのコスト削減に注力せざるを得ない状況です。法改正が決まった2007年3月期に比べ、当期における大手4社の営業収益は合計で6,042億円(46%)減少し、とりわけ無担保ローンの利息収入の減少幅が著しく、4社合計で5,900億円(50%)の減少となっています。

このように、上限金利の引き下げや総量規制の導入といった今回の法改正は、消費者金融ビジネスの根幹に大きな影響を与えています。

今後の市場見通し

消費者金融市場は、2011年3月期をボトムに、再び緩やかな拡大局面に入ることが予想されます

利息返還請求による貸付力の低下、貸金業法の4条施行による与信厳格化スタンスの継続に加え、足元の景気後退や調達環境悪化の影響から、消費者金融業者の短期間での業績回復は期待しがたく、マーケット規模の縮小はしばらく続くと考えられます。

しかし、中長期的に見ると、貸金業法の完全施行により、多重債務者の減少に伴って貸金業者のクレジットコストが大幅に減少し、リスク許容度は再び増加に転じます。任意ゾーン金利の撤廃や継続的な与信厳格化実施で、各社の債権ポートフォリオの入れ替えが進み、現在高止まり状態にある利息返還請求も、いずれ収束することが見込まれます。潜在的な事業リスクが低減されることにより、銀行などの金融機関の厳しい融資スタンスが緩和され、事業資金の調達が比較的容易になることから、消費者金融業者は再成長の経営スタンスに転じます。

このように見ると、消費者金融マーケットは、2011年3月期をボトムとし、その後は再び緩やかな拡大局面に入ることが予想されます。当社グループとしては、お客様のニーズに支えていただくことによって足元の厳しい事業環境を乗り越え、健全な消費者金融市場の創造・発展に寄与し、消費者金融会社としての社会的な役割を果たしてまいります。



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